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家族信託の受託者とは?
家族信託の「受託者」とは
家族信託を検討する際、「受託者」という言葉を耳にする機会があるかもしれません。 受託者とは、委託者から財産を託されて管理する人のことで、家族信託において中心的な役割を果たします。受託者になるために特別な資格は必要ありませんが、財産管理における重い義務や責任が課せられています。
本記事では、受託者の役割や権限、受託者になれる人の条件、課せられる義務と責任について詳しく解説します。家族信託を検討している方や、受託者になる予定の方はぜひ参考にしてください。
家族信託において、受託者は財産を預かり管理する重要な役割を担います。委託者や受益者との関係、受託者が持つ権限などについて具体的に見ていきましょう。
受託者の役割
受託者とは、家族信託において財産を預かり管理する人のことです。具体的には、委託者から託された財産を信託契約で定められた目的に従って管理・運用していきます。例えば、親が認知症になった場合に備えて子どもを受託者にすると、子どもが親の代わりに不動産の管理や預貯金の出し入れを行うことができます。
【受託者の主な業務】
- 財産の日常的な管理
- 医療や介護にかかる費用の支払い
- 信託契約に基づいた財産の処分
- 信託終了時の清算と財産の引き継ぎ
受託者は信託契約で決められた範囲内で、受益者のために財産を適切に管理していく重要な役割を担います。
委託者・受益者との関係
家族信託には、受託者のほかに委託者と受益者という当事者がいます。
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立場 |
役割 |
具体例 |
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委託者 |
財産の持ち主で、受託者に財産管理を託す人 |
財産を持つ親 |
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受託者 |
財産を預かり管理する人 |
親から託された子ども |
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受益者 |
信託財産から生じる利益を受け取る人 |
賃料や配当を受け取る親 |
例えば、親が子どもに財産管理を任せる場合、親が委託者となります。
受益者とは、信託財産から生じる利益を受け取る人のことです。多くの場合、委託者と受益者は同じ人になります。つまり、親が財産を子どもに託しても、財産から生まれる利益は親が受け取るという仕組みです。
信託財産の名義と権限
家族信託を設定すると、信託財産の名義は委託者から受託者へ変更されます。例えば、不動産を信託財産にした場合、登記簿上の所有者名義は受託者になります。ただし、名義が受託者になっても、財産から生じる利益を受け取るのは受益者です。受託者は信託契約で定められた範囲内で、財産の管理や処分を行う権限を持ちます。
【受託者ができること(例)】
- 不動産の売却や賃貸
- 預貯金の管理や出し入れ
- 必要な修繕や維持管理
ただし、受託者が自由に何でも出来るわけではなく、あくまで信託契約で決められた目的の範囲内でのみ権限を行使できます。
受託者になれる人・なれない人
家族信託の受託者になれる人、なれない人には法律上のルールがあります。資格や家族以外の人、複数人での設定など、受託者の条件について詳しく見ていきましょう。
資格は不要
家族信託の受託者になるために、特別な資格は必要ありません。
法律上、受託者になるための資格要件は定められていないため、基本的には誰でも受託者になることができます。
例えば、親が子どもに財産管理を託す場合、子どもに何か特別な免許や資格が無くても受託者になれます。
ただし、受託者は財産の管理や運用という重要な役割を担うため、財産管理をきちんとできる人、信託の内容を理解して適切な判断ができる人、委託者の想いを尊重してくれる人を選ぶことが大切です。
注意点として、仕事として受託者になる場合には内閣総理大臣の免許が必要になります。
家族以外・法人もOK
家族信託という名称から、受託者は家族や親族でなければならないと考えている方もいるかもしれません。しかし、実際には家族や親族以外の人でも受託者になることができます。信頼できる知人や友人などに受託者を依頼することも可能です。元々は「民事信託」が正式名称で、分かりやすくするために家族信託という呼び方が使われているだけです。
また、個人だけでなく法人も受託者になることができます。株式会社や合同会社、一般社団法人など、法人の種類は問いません。
法人を受託者にする主なメリットは、個人の受託者のように死亡や病気による信託契約の終了がない点、名義人の変更手続きが不要な点です。
複数人の設定も可能
家族信託では、受託者を複数人設定することも可能です。
例えば、兄弟2人で受託者になり、日常の金銭管理と不動産管理を分担するといった使い方ができます。
【複数人設定のメリット】
- 信託事務の負担を分担できる
- 受託者同士で相互にチェックできる
- 判断に迷ったときに相談できる
【複数人設定のデメリット】
- 意思決定に時間がかかる
- 信託口口座が作れない
- 過半数の賛成が必要(受託者が2人なら2人とも賛成が必要)
特に不動産の売却などでは、受託者全員の合意が必要になるため、意見が分かれると手続きが進まなくなってしまいます。
複数人で関わりたい場合は、一人を受託者にして、もう一人を信託監督人にするといった方法もあります。
未成年者は不可
未成年者は法律上、受託者になることができません。信託法第7条で明確に定められています。
例えば、孫を受託者にしたいと考えている場合は、孫が成人しているかどうかを確認する必要があります。
未成年者が受託者になれない理由は、未成年者は判断能力が未熟と考えられており、自分自身の財産についてすら単独で処分することが出来ないためです。民法第5条では、未成年者が有効な契約を結ぶには親などの法定代理人の同意が必要とされています。
信託財産という事実上他人の財産に対して、管理処分権を与えることは適切ではないと判断されています。
専門家の業務受託は不可
適切な受託者がいない場合、司法書士や弁護士などの専門家に受託者を依頼したいと考える方もいるかもしれません。しかし、専門家が業務として受託者になることは法律上認められていません。
信託業法により、信託業務を営利目的で業務として行う場合は、金融庁からの特別な免許が必要です。当該免許を保有しているのは信託銀行や信託会社など、会社名に「信託」がついている企業のみです。
一般的な司法書士や弁護士などの士業専門職が免許を持っているケースはほとんどありません。そのため、専門家に仕事として受託者を依頼することは困難です。ただし、専門家に信託契約の設計や相談をすることは可能です。
受託者に課せられる義務
家族信託の受託者には、財産を適切に管理するためのいくつかの義務があります。善管注意義務や分別保管義務など、主な義務について見ていきましょう。
善管注意義務・忠実義務
受託者には「善管注意義務」と「忠実義務」という2つの重要な義務が課せられます。善管注意義務とは、善良な管理者の注意をもって信託財産を管理する義務のことです。受託者という立場にある人が払うべきと期待される程度の注意を払う必要があり、自分自身の財産を扱うとき以上に慎重に管理しなければなりません。忠実義務とは、受託者が専ら受益者の利益のために行動しなければならない義務です。信託事務を行う際に自分自身の利益を図ってはならず、常に受益者の利益を最優先に考える必要があります。
分別保管義務
受託者には「分別保管義務」という義務が課せられています。分別保管義務とは、信託財産と受託者自身の財産を分けて管理しなければならない義務のことです。例えば、不動産であれば信託の登記をすることで受託者個人の不動産と区別します。預貯金であれば、受託者個人の口座とは別に信託財産専用の口座を作って管理します。動産の場合は、外見上で区別できるように保管する必要があります。分別保管の方法は財産の種類によって異なりますが、いずれも信託財産と受託者個人の財産が混ざらないようにすることが目的です。
帳簿作成と報告義務
受託者には、信託財産に関する帳簿や書類を作成し、受益者に報告する義務があります。具体的には、信託事務に関する計算や信託財産の状況が確認できる帳簿を作成しなければなりません。また、貸借対照表や損益計算書といった財産状況を示す書類も作成する必要があります。作成した書類の内容については、毎年1回、一定の時期に受益者へ報告します。信託契約で報告義務を免除することもできますが、書類の作成義務自体は免除できません。
さらに、作成した書類は10年間保存する義務があり、受益者から請求があれば閲覧させる必要もあります。
受託者の責任と制限
家族信託の受託者には、財産管理における責任と行為の制限があります。損失補填責任や利益相反行為の制限など、主な内容を見ていきましょう。
損失補填責任・無限責任
受託者には「損失補填責任」と「無限責任」という2つの責任が課せられます。損失補填責任とは、受託者が任務を怠ったことで信託財産に損失が生じた場合、受託者自身の財産を使ってでも損失を補わなければならない責任のことです。
例えば、管理が不十分で信託財産の金銭を失ってしまった場合、失われた分を受託者が自分のお金で補填する必要があります。無限責任とは、信託財産に関連して負った債務を、信託財産だけでなく受託者自身の財産を使ってでも返済しなければならない責任です。信託不動産の管理で銀行から融資を受けた場合、返済できなければ受託者個人の預貯金なども使う必要があります。
利益相反行為の制限
受託者には「利益相反行為の制限」という制限が課せられています。利益相反行為とは、受託者と受益者の利益が相反する行為、つまり受託者が利益を得る一方で受益者が損害を受けるような行為のことです。受託者は受益者のために財産を管理する立場にあるため、自分自身の利益を優先する行為は原則として禁止されています。具体的には、信託財産を受託者個人の財産に移すことや、受託者が第三者の代理人として信託財産について行為することなどが禁止されます。ただし、信託契約で許されている場合や、受益者の承認を得た場合には例外的に認められることもあります。
まとめ
家族信託の受託者には、善管注意義務や分別保管義務などの義務が課せられ、損失補填責任や無限責任といった責任も負います。受託者を選ぶ際には、財産管理をしっかりできる人、委託者の想いを尊重してくれる人を選ぶようにしましょう。なお、家族信託で財産管理の備えをする際には、将来の介護についても併せて考えておくと良いでしょう。
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